「記録はタブレットで」
デジタル・アーキビスト講習会の記録機にICONIA TAB A500、A100が採用。 Japan Society of Educational Information Report 3
2012年02月16日
人類の歴史遺産や文化遺産などを記録し、次世代の人々のために残していくデジタル・アーカイブ。デジタル・アーキビストはその記録を保存する人たちのことだ。2011年末に沖縄で実施された講習会では、記録機としてエイサーのAndroid™タブレットが採用され、一風変わった撮影風景で観光客を驚かせていた。
GPS内蔵のICONIA TAB A500、A100はデジタル・アーカイブにうってつけ
「収蔵物」という意味のアーカイブだが、IT技術の進展とともにデジタル化されてから大きな意味を持つようになってきた。というのは、フィルムや紙に記録された従来のアーカイブが経年変化による劣化を免れないのに対して、デジタル記録は劣化に強いだけでなく、コピー保存を繰り返すことで散逸も防ぐことができるからだ。
劣化しない記録は、次世代の人々に現在の知的財産を残すことを意味する。それは新しい価値感を育てるための活動でもある。そのため、デジタル・アーカイブは1995年に開催された情報サミットでその推進が合意されている。
日本でもさまざまな分野でのアーカイブ活動が展開されているが、その一環として2011年12月23〜25日に、「デジタル・アーキビスト講習会2011 in 沖縄」が開催された。主催は岐阜女子大学、共催は沖縄女子短期大学、公益財団法人沖縄県文化振興会、後援は沖縄県、日本教育情報学会、NPO日本デジタル・アーキビスト資格認定機構である。
今回の講習会の目的は、より実践的なアーカイブ技術を体得するために、沖縄の伝統芸能を中心にデジタル・アーカイブし、実践的なデジタル・アーキビスト教育へつなぐこと。そのために画像・映像記録のツールはデジタルカメラやデジタルビデオではなく、エイサーのAndroid™の目タブレット「ICONIA TAB A500」と「ICONIA TAB A100」に統一された。
この2機種が選ばれた理由は、携帯性に優れ、バッテリーの持ちも良く、十分なストレージ容量とカメラ性能を持つことに加えて、GPSを内蔵していることにあった。デジタル・アーカイブ活動では記録に連携したメタ情報としてGPS情報が必須となる。従来はカメラとは別にGPSを持ち運び、撮影するたびに情報を書き写す必要があったが、GPS内蔵の記録装置であればその手間が省ける。
珍しい撮影スタイルに世界遺産の観光客もびっくり
撮影に使われたのは10.1インチディスプレイのA500が10台、最新機種で7インチディスプレイのA100が3台であったが、女性を中心にA100の人気が高かった。女性の手にちょうどフィットする大きさであるだけでなく、女性用のバッグにするっと入ることも好印象だったようだ。
23日の講習内容は、首里城公園内でのアーカイブ撮影研修。世界遺産の首里城をめぐりながら、4時間にわたって各自で「記録すべき」と判断したものを撮影していく。事前に岐阜女子大学の久世 均教授から簡単な使用説明はあったが、戸惑う人もなくみな自然に使いこなしている。このあたりは「直感的にすぐ使える」「タッチ操作だから簡単」というタブレットの面目躍如である。
受講者たちはタブレットを手に、ガイドさんの説明を聞きながら首里城のさまざまな場所を撮影し、記録していく。合計13台のタブレットで記録されたデータは、後でサーバーにまとめて分類・保管され、メタ情報などから検索できるようになる。ガイドさんが案内してくれる様子もA500で撮影され、メタ情報に含まれない歴史的背景も記録に残されていた。
ユニークだったのはタブレットによる撮影スタイルで、両手で保持し、顔から離して撮影する姿は、デジカメとも携帯電話のカメラとも違う。十数人が同じ格好で並んでいると目立ってしまい、守礼門や正殿の前では、撮影している講習会メンバーのまわりを、観光客が遠巻きにして見ていた。
デジタル・アーカイブの分野では、映像、音声、静止画の取得と保存ならびにそれらの再生、拡大などの機能、学習履歴の把握や共有、長時間の駆動、GPS機能といったものが要求されるが、ICONIA TAB A500、A100は、それらの項目をすべてクリアしている。さらに講習の参加者からは、両機の操作しやすさ、使いやすさに加えて、HDMI端子を介して大画面モニターに記録内容を映し出せる機能が高く評価されていた。
2つの研究会で話題となった教育用メディア端末としてのタブレット
「情報の記録装置」として期待されるタブレット
2011年12月25日、沖縄女子短期大学記念館ホールにて「デジタル・アーカイブ研究会」と「教育資料研究会」の研究発表会が行われた。デジタル・アーカイブの分野では前述のように記録用端末としてのタブレットが話題になっているが、教育のICT化をテーマとする教育資料研究科でも、タブレットは注目すべき端末機として取り上げられた。
岐阜女子大学の久世 均教授は発表の中で、教育用メディア端末に求められる機能を次のように話している。
「教育用メディア端末には、コンテンツ再生機能のほかに、動画や静止画の映像記録機能や音声の録音機能も必要になります。教育用として実験や観察などの記録やプレゼンなどに必要な機能だからです。その記録をアーカイブ的に保存するなら、GPS機能も必要になります」
コストパフォーマンスに優れたタブレットが教育界を席巻する
久世教授は教育分野におけるタブレットの可能性をこう見ている。
「教育分野でICT化が思うように進まない理由は、準備に時間がかかりすぎることと、機器の台数が不足していることです。安価で手軽に使える機器が利用できるようになれば、飛躍的に授業におけるICT化が進む可能性が考えられます。その代表的な端末がタブレットであると、私は考えています」
久世教授によると、アメリカ・フロリダ州にあるセントラル・フロリダ大学の医学部では、2010年から学生に医学用教材アプリを搭載した教育用メディア端末が無償で配布され、3D映像などで人体の構造などを学んでいるという。同大学に限らず、アメリカの教育界におけるICT化はペースが上がってきた。わが国では文科省がようやく腰を上げたところだが、遠くない将来にタブレットが教育の現場を一変させることだろう。