導入事例

自分で問いを立て、協働しながら考える、
深い学びにAcer Chromebookを活用
授業の成果が探究コンテストを受賞

宇都宮文星女子高等学校(栃木県)様

導入モデル:Acer Chromebook R752T-G2〈ノートブック〉

ノートブック 学校・教育

宇都宮文星女子高等学校様は、創立92年の歴史ある女子校です。2019年に難関大学への進学を目指す秀英特進科にAcer Chromebook を導入、2021年からは栃木県の高等学校では初となる全生徒1人1台のAcer Chromebook導入を実現しました。「ICTはツール」と捉え、調べ、考え、協働し表現するアクティブ・ラーニングに取り組む、宇都宮文星女子高等学校様にお話を伺いました。

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index|● 導入担当者インタビュー 篠原孝文 先生 ● 教諭インタビュー 遠藤浩史 先生 石井裕太 先生 ● 授業レポート 地理・英語・総合研究 ● Student's Voice ● 校長先生インタビュー 上野一典 学校長

Interview ● 導入担当者インタビュー

【導入担当者インタビュー:篠原孝文 先生】

主体的なより深い学びを求めて--ICT環境の必要性

学習指導の面からICTに興味を持ち始めたのは2014年頃でした。当時、先生が教えて生徒が聞くというインプットだけの授業では、生徒の学びが浅くなっているように感じていました。より深い学びを得るためには、生徒が知識をアウトプットできる時間を、学校の中でしっかりと設ける必要がある。そのためにICT環境が必要ではないかと思うようになりました。
そんな折、佐野日本大学中等教育学校・高等学校の安藤昇先生のお話を聞く機会があり、Googleのサービスや1人1台のICT環境が、深い学びを実現する主体となり得るという考えに至りました。その年の内にGoogle Apps for Education(現 Google Workspace for Education)を学内に導入。他のグループウェアも検討しましたが、基本的な機能を装備し、教員もGmailで操作に慣れているGoogleが一番使いやすかったです。クラウドの導入により、先生方が学内資料の情報共有をするようになり、情報を見ていない・聞いていないという教務の問題が解消しました。

教務副部長・学習指導部長・ICT推進部長 篠原孝文 先生
Acer Chromebookを活用して、生徒が作成したブックレポート。自分の読後感をわかりやすく見やすく、伝える技術の練習になっています。

Acer Chromebookを活用して、生徒が作成したブックレポート。
自分の読後感をわかりやすく見やすく、伝える技術の練習になっています。

東北学院中学校・高等学校の事例からAcer Chromebookを知る

当初Windows端末の導入を検討していましたが、どうしてもコスト面でかなり高額になります。2017年10月に東北学院中学校・高等学校の新田晴之先生のお話を聞く機会があり、初めてAcer Chromebookの存在を知りました。高速起動のChrome OSとGoogleのクラウド連携もよく、学習用端末として最適だと思いました。翌年2月には東北学院中学校・高等学校へ視察に伺い、2018年には導入を決定。東北学院中学校・高等学校では、レポート作成でも何でも自然に生徒が活用していて、これなら本校でも活用できると自信を持ちました。

宇都宮文星女子高等学校様のICT化の歩み

職員、生徒に1人1台を段階的に進めていく

Acer Chromebookの導入は段階的に進めていき、まず職員、そして大学進学を目指す秀英特進科の生徒、最終的に2021年から全生徒に1人1台の導入となりました。導入にあたってはマニュアルを特別に作成することもなく、生徒の方が自然に使い方に慣れていき、大きな問題はありませんでした。Acer Chromebookはそれだけ操作が簡単なのだと思います。
本校のICT化がスムーズに進んだのは、新田先生や他校の先生方からアドバイスをいただけたおかげです。さらに私が、学習指導部長、教務副部長、ICT推進部長を兼任していたということも大きいです。何と言っても1人3役で連携もいいし効率的ですから。学校でICT化推進を考える時、学習指導部×教務×ICT推進、この3つの部署がうまく連携をとることが非常に重要になります。

教室の机にノートブックがあるのは、ごく当たり前の日常風景に。

教室の机にノートブックがあるのは、ごく当たり前の日常風景に。

「共有」がコミュニケーションを生む

ICTはInformation and Communication Technologyの略ですが、何よりもCommunicationの部分が重要です。どこでもつながるTechnologyのおかげで、私達は自由にInformationを共有することができるようになりました。ICT環境を整備したこれからは、Communicationを大切にし、生徒に対しては自分で深く考える力を育む教育を徹底していきたいと考えています。

生徒が書いた大学の志望理由書を、オンライン上で数人の先生がチェックしてコメントを書き込みます。クラウドで共有しているため、生徒も先生も、どこにいてもいつでもチェックできます。

生徒が書いた大学の志望理由書を、オンライン上で数人の先生がチェックしてコメントを書き込みます。
クラウドで共有しているため、生徒も先生も、どこにいてもいつでもチェックできます。

teach(教える)からfacilitate(円滑にする)へ

これからは、ただ先生の言うことを覚えればいいという授業ではなくなっていきます。自分で知識を獲得し、問いを立て、自分の考えを述べる。答えのない課題を自分で見つけ、その答えを生徒達が協働しながら、自分で探し求める。そんなスキルを持つ人間に成長してほしい。そのために我々教諭は、知識だけを教えるのではなく、生徒が自分で考えるためのファシリテートをする存在に変わっていく必要があります。
ICTでもそうですが、先生には教えなければいけない意識が強くありすぎます。Acer Chromebook導入時、当初は自分が先にマスターして生徒に教えなければいけないという意識の先生が多かったのです。しかし実際は生徒の方がずっと早く慣れて、先生に教えてくれることもあります。先生も、生徒に使い方を教わってもいいのです。そうやって一緒に伴走していく存在として、生徒の探究心を育んでいければと考えています。

Interview ● 教諭インタビュー

(写真左から)英語 教諭 石井裕太 先生、地理 教諭 遠藤浩史 先生。

(写真左から)英語 教諭 石井裕太 先生、地理 教諭 遠藤浩史 先生。

導入前・導入後--不安から思考するツールへ、ビーチボールからGoogle Earthへ

地理 教諭 遠藤浩史 先生

石井先生
1人1台の導入が決定した当初は、本当に教育に必要だろうか?という不安はありました。しかし導入後は、今まで紙で準備したものがデータに置き換わって作業の時短になり、生徒の活動や授業に時間を費やせるようになりました。Acer Chromebookがあるおかげで、生徒も思ったことをその場ですぐ文字化できるようになり、非常によい思考するツールだと感じています。

遠藤先生
私は導入前から楽しみの方が勝っていました。それまでは、平面の紙地図しかありませんでしたから、地球の形を生徒にそのまま示したい時は、大きなビーチボールを見立てて使っていたんです。今や実際にGoogle Earthを使えるので、これでいろいろなことができるぞ!と思いました。ただ、そこからどこまで生徒に思考させられるかというのが課題だと思います。

英語の発音録音提出、Google フォームで定期テスト

石井先生
Google Classroomはトピックごとに課題を分類できるので、たとえば月曜日は文法、火曜日はスピーキングとトピックを分けたときに、日付ソートもできて、見やすく使いやすいです。昨年コロナ禍で教室での発声ができない時は、生徒にAcer Chromebookで音声を録音して提出させて発音のチェックを行い、アドバイスをファイルにコメントで伝えるなどしていました。

遠藤先生
Googleフォームが強みを発揮するのは定期テストです。紙の定期テストは廃止しました。地理は地図を使う科目で、統計地図も色がついている方が見やすい。視力が弱い生徒は、拡大して地図を見ることもできる。ただ単調にならないよう、フォームの中に生徒が主体となって活動できる参考資料リンクやYouTube動画をつけています。写真やコメントをつけられるGoogle Jamboard(電子ホワイトボード)を利用して、生徒に観光スポットを紹介するガイドブックを作らせることもあります。

保護者の変化、生徒の変化

英語 教諭 石井裕太 先生

石井先生
保護者世代は勉強中にスマホやパソコンを使うことに抵抗があったと思いますが、子ども達がAcer Chromebookで勉強する姿を見て、デジタル活用への認識が変わったようです。たとえばタイマーなど動きのあるスライドを使った方が、授業中の生徒の表情も楽しそうに変わります。ゲーム感覚でインタラクティブな授業にすると集中するし、相手の表情を見る余裕もできます。

遠藤先生
ふだん喋らない寡黙な子が、地理のグループワークでとてもよく喋っていたのが驚きでした。ノートと教科書と黒板を使った昔ながらの授業では、あの子のそういう面は出て来なかっただろうなと思います。生徒も、自分でよく考えるようになりました。

今後目指すことは、教科横断型授業、考えをアウトプットする授業

石井先生
英語は英語だけ、地理は地理だけではなく、教科を横断した学びにつなげたいです。地理でアメリカの地形を学んでいるなら、英語でもアメリカの地理や歴史を取り入れれば、興味が広がります。まだ実現していませんが、先生同士で連携してやってみたいことのひとつです。

遠藤先生
生徒が自分の考えを教室でアウトプットする時間をもっと設けたいですね。自分の考えをクラスで共有することによって、さまざまな側面の考えを知ることができます。アウトプットする技術を身につけ、複雑な世の中でも自分の意見を表明して生きていける人に成長してほしいです。

Report ● 授業レポート

地理:Google Earthを活用して複合的な地図情報を分析する

黒板はホワイトボード。プロジェクタで先生の画面を映します。

黒板はホワイトボード。プロジェクタで先生の画面を映します。

遠藤浩史先生による地理の授業は、この日は「日本の環境問題」がテーマ。日本の4大公害の定義や、どの地域で公害が発生したのか、提供されたPDF資料を見ながら、自分でGoogleフォームに考えをまとめます。

教科書を開きながら、Acer Chromebookに自分のまとめを入力していきます。

教科書を開きながら、Acer Chromebookに自分のまとめを入力していきます。

「原子力発電所の立地を考えるプロジェクト」では、先生からGoogle Classroom経由で提供された「人口密度、人口、断層の活動セグメント、世界のプレート境界、日本の原発所在」の5つのKLMファイル(Google Earthの各種情報を表示するファイル)を、生徒が自分のAcer ChromebookにダウンロードしてGoogle Earthに表示させます。ファイルのダウンロード方法や表示方法がわからない生徒は、他の友達に教えてもらいながら、自然に操作方法を学んでいます。Google Earthを使うことで、地理の授業がぐんと立体的にわかりやすく感じます。

情報を追加したGoogle Earthを見ながら、グループでディスカッション。

情報を追加したGoogle Earthを見ながら、グループでディスカッション。

Google Earthで得た情報や日本のエネルギー政策の資料を元に、生徒それぞれが最適な原発の立地場所を考え、「なぜその場所が最適と考えるのか?」グループワークでその理由を話し合います。入手した情報を分析し、自分の考えを皆と共有し、意見をまとめるという一連の作業が、シームレスに出来上がっています。

英語:スライドを使って和文・英文をお互いに質問し合いっこ

2年生の英語の時間は、先生からあらかじめ配信されていた英文・和文がセットになった30の設問スライドをシャッフルして、ペアワークで交互に回答し合い、正解数をチェックします。

わかりやすいスライドで、ゲーム感覚で活用できそう。

わかりやすいスライドで、ゲーム感覚で活用できそう。

文法は、理解を深めるために、クラスメイトに対して自分で文法の口頭説明を発表します。教科書をそのまま読むのではなく、自分の口で説明することで、どれだけわかっているのか気づくことができます。各自の説明は共有スプレッドシートに追加していき、先生が説明を補足します。

Acer Chromebookは、紙のノートのようにすっかり授業に溶け込んでいます。

Acer Chromebookは、紙のノートのようにすっかり授業に溶け込んでいます。

総合探究:課題を自分で見つけ、論理的思考を育む

「総合的な探究の授業」は、1年生の8クラス同時に実施します。篠原先生が全クラスにMeet配信で、課題の説明を行います。

「総合的な探究の授業」は、1年生の8クラス同時に実施します。
篠原先生が全クラスにGoogle Meet配信で、課題の説明を行います。

この日の探究の課題は「栃木魅力調査」。地域・社会について、WEBを中心に個人作業で調べて、困りごとをピックアップ。集めた課題から、疑問と解決方法を導きだします。栃木または宇都宮について「いいなと思うところ/なぜと思うこと/嫌だな、変だな、危険なだと思うところ/もっとこうだったらいいのにと思うところ」を、生徒たちがめいめいワークシートに書き込みます。

他の生徒がどんな作業をしているのか、ワークシートの内容が1年生全体に共有されます。

他の生徒がどんな作業をしているのか、ワークシートの内容が1年生全体に共有されます。

探究の時間では、さまざまな課題に取り組み、1年生のうちからWEBでの調査や分析、自分の意見をまとめて、人前で発表できる訓練を行います。探究の授業を通して、生徒は論理的思考を身につけ、伝えるための技術を学ぶのです。課題内容は、校内ポータルサイトを通して全生徒が閲覧でき、感想入力フォームを通して意見が集まり、最終的にはポスター発表を行います。最初は、原稿を見ないと話せない、人の目を見ることができなかった生徒が、徐々にプレゼンテーション能力を身につけて成長していきます。

探究の時間中、お気に入りのステッカーをペタペタ貼ってカスタマイズされているAcer Chromebookを見かけました。自分だけの愛用ノートブックになっていますね。

探究の時間中、お気に入りのステッカーをペタペタ貼ってカスタマイズされているAcer Chromebookを見かけました。
自分だけの愛用ノートブックになっていますね。

Student's Voice ● 探究活動の成果が「全国探究コンテスト2020」準グランプリを受賞!

(写真左から)秀英特進科2年生の渡邉愛梨さん、伊澤沙恵さん、髙橋夢果さん、野尻姫名さん。

(写真左から)秀英特進科2年生の渡邉愛梨さん、伊澤沙恵さん、髙橋夢果さん、野尻姫名さん。

1年生の時に4人は、「私達の時間にはどれほどの価値があるのか」という探究課題に取り組み、Acer Chromebookを使って「Time is Money」というレポートを共同作成しました。

スライドや啓蒙ポスターの作成まで、4人で手分けして担当した「Time is Money」。

スライドや啓蒙ポスターの作成まで、4人で手分けして担当した「Time is Money」。

探究レポート「Time is Money」は、1分あたりの授業料を計算で求め、学校内の課題として、先生が授業に来るまでの時間が守られていないことを提起しました。課題を指摘するだけでなく、Googleフォームを使って生徒や先生に意識調査を実施。調査結果から、負担の多い先生の実情、生徒の授業態度を洗い出して、課題解決策を考案。生徒や先生が、授業の価値を正しく理解するべく啓蒙ポスターを作成し、学内発表を行いました。その後担任の先生から「全国探究コンテスト2020」に参加したらと勧められ、4人は発表の猛特訓。準グランプリを受賞しました。

受賞してどうだった?

4人とも口を揃えて言うのが、先生から課題を提供されていた中学時代と違い、高校では自分で課題を見つけて調査・探究するようになり、自分で考える力が身についたということ。Acer Chromebookがいつも側にあるから、すぐ自分で調べて疑問を解決できるようになったのも、今までとの大きな違いのようです。

初めて自分専用Acer Chromebookを手にした時どんな気持ちだった?

自宅でGoogle Meetでつながりながら、それぞれの勉強を進める勉強会をやっているそう。夜8時から12時過ぎまで勉強をすることも。「画面越しに友達も勉強しているから頑張ろうって思えます!」

自宅でGoogle Meetでつながりながら、それぞれの勉強を進める勉強会をやっているそう。
夜8時から12時過ぎまで勉強をすることも。「画面越しに友達も勉強しているから頑張ろうって思えます!」

高橋さん
自宅にタブレットやパソコンがなかったので、入学して初めて自分専用のAcer Chromebookをもらって、ドキドキとワクワクがありました。勉強でいろいろなことに利用できるし、学習以外でも、本を読んでいてわからない単語がすぐ調べられて便利に活用しています。

野尻さん
最初学校からAcer Chromebookをもらった時は、使い方がわからなくて不安だったのですが、2年間で随分使いこなせるようになり、課題や授業がとても楽しくなりました。プライベートではYouTubeを見て楽しんでいます。

伊澤さん
機械が苦手なので入学当初は説明書を確認していましたが、今では説明書も必要なくて、毎日の勉強に欠かせないツールになりました。Acer Chromebookがあれば、自分の部屋で塾のオンライン授業を受けられるし、祖母の家でも宿題ができるし、どこでも勉強ができると思いました。

渡邉さん
入学前からAcer Chromebookを使って授業することは知っていたのですが、どんな授業内容なのか少し不安でした。2年になってようやくどう使えばいいのかわかってきました。わからないことはクラスメイトに教わります。家にあるパソコンよりコンパクトな点も嬉しいです。

Acer Chromebookを使った授業で、こんなことができたらいいな

Interview ● 校長先生インタビュー

自ら深く考え、よく調べ、
表現する力を育むためのICTツール

本校は20年以上前からICT先進国オーストラリアへの留学を実施しており、視察でICT教育のメリットやデメリットをつぶさに見てきました。また私も家族もイギリスの留学経験があり、生徒にものを考えさせる探究的な教育方針を間近に見てきました。その経験から、ICTだけに頼るのではなく、バランスが大事だと考えています。
これからの社会に必要なスキルは、人間にしかできない力を身につけていくことにあります。未来を担う学生には、深く考える力、情報を調べ判断する力、それらを分析して自らの考えを表現する力が求められています。 ICTはそのための道具に過ぎません。 だからこそ、ICT環境を導入して、生徒自身が探究する力を育む学校環境を提供する責務があるのです。私達も生徒も、新しいことに臆することなく、いろいろなことにチャレンジしていきたいと考えています。

宇都宮文星女子高等学校 上野一典 学校長

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